デジタル時代の今、インターネット上では過度に加工された顔があふれています。なぜ、人間は《理想の顔》に取り憑かれるのでしょうか。そのカギとなる「脳の働き」に、大阪大学大学院情報科学研究科にて身体・脳・社会の相互作用を研究する中野珠実教授が、最新科学で迫ります。中野先生曰く、人種や文化によって顔の魅力や美の基準は大きく違いますが、実は、普遍的な美の基準も存在するそうで――。
《魅力的》に感じる顔とは
私たちは第一印象の判断において、相手への信頼性だけでなく、顔の魅力度も一瞬で判断しています。その一瞬の判断を良くしようと、化粧をしたり、髪型を整えたり、と見た目をとても気にしているのです。
もちろん大前提として、見た目だけでなく、その人の人柄をはじめとした内面が重要であることは言うまでもありません。ただその一方で、魅力的な顔の価値を調べた研究もあります。
たとえば、ヘテロセクシャルな男性に魅力的な女性の写真を見せたところ、その男性の脳の中ではドーパミン報酬系が活発にはたらいていました(*1)。
一方、魅力的な男性の写真を見せてもドーパミン報酬系はほとんどはたらきませんでした。このように、顔の魅力というのは、配偶者選択において特に重要な価値を持つようです。
それは人間だけでなく、さまざまな生物の配偶者選択や性選択においても、とても重要な価値を持っています。オスのクジャクの羽に代表されるように、多くの生物では、もっぱらオスがメスに選ばれるために、色鮮やかな体表や無駄に長くて豪華な羽や角を持つ傾向があります。
これは、外敵に狙われるリスクを冒してまで目立つことで、自分の強さや成熟度合いをメスにアピールしているのではないか、と考えられています。では人間の場合、どのような特徴が顔の魅力に関わっているのでしょうか。