今年も「山里だより」が届いた。高校の時の友人、S子からの年賀状のタイトルである(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
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年に1回のお楽しみ

今年も「山里だより」が届いた。高校の時の友人、S子からの年賀状のタイトルである。パソコンで印字された手作り感あふれる賀状で、彼女の山暮らしの近況報告になっている。

400字程度で要領よくまとめられた文面は、ユーモアにあふれ、毎年読むのが楽しみだ。印刷屋さんでプリントしてもらった派手なだけの賀状に比べ、格別の味わい深さがある。

体裁もしゃれていて、「賀正」と「元旦」の四文字だけが木版で赤色、本文は黒一色。新聞のコラムのような落ち着きがあるのだ。彼女から、「山里だより」には熱心なファンが多いと聞いていたが、私も間違いなくその一人である。

S子は出会った当時から、イラストを描いたり、文章を書いたりするのが好きだった。長く会社勤めをしていたが、自然を身近に感じるところで暮らしたくなったと、未婚のまま、限界集落とも言える今の場所に根を下ろした。

一度だけ彼女の自宅を訪ねたことがある。ローカル線の駅で下車し、彼女の中古車に乗せられて着いた先は、予想を上回る閑静ぶり。休耕地に囲まれたなかに、ぽつんと立つ小さな平屋が彼女の住処だ。

そんなS子から届いた今年の「山里だより」を読んでみて、「おや」と思った。どうもニュアンスがいつもと異なっている。

彼女は、庭で採取したオオバコ、ヨモギといった野草から作る、ブレンド健康茶を長年楽しんでいるのだが、今年はそれがだめだったと落胆しているのだ。隣接する休耕地で繁茂したクズの蔓が、仕切りのない境界を越えて押し寄せ、庭全面が覆われてしまったらしい。

「隣地とのトラブルを避け、このまま放っておくつもり」と書く彼女に、田舎暮らしの厄介さから目を背ける諦念を感じた。


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