(イラスト:宮下 和)
60歳以上の男女を対象に行った内閣府の「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」(2021年度)で、「どの程度生きがい(喜びや楽しみ)を感じているか」の項目で、「感じている」と回答した人の割合は73.2%で、平成25年と比較すると5.5%下がっていた。感じるときについては、孫など家族とのだんらんの時、おいしい物を食べている時に続いて、趣味やスポーツに熱中している時、友人や知人と食事、雑談している時が続きました。人とのつながりは生きがいにつながる一方で、切るに切れない縁となってしまうことも。 瀬尾かおりさん(仮名・大阪府・主婦・57歳)は、「生涯学習スクール」でのグループで悩みの種が生まれてしまい――(イラスト:宮下 和)

夢実現の第一歩に立ち会えるのか

50代の初め、私は「生涯学習スクール」に通い出した。回を追うごとに気の合う参加者でまとまり、グループに分かれていく。私は40~50代の女性のグループに属していた。

その中でとびぬけて若く、目立っていたのが、30代前半のMさんだ。目鼻立ちのはっきりした、きれいな人だった。ある日の休憩時間。めいめいの《職場あるある》を話し、笑い合っていた時、誰かがMさんに尋ねた。

「お仕事、何されてるの?」「女優です」一斉に上がる「えーっ」「すごーい」の声。「TVとかCMとかに出てるの?」「いえ、舞台です。でも、女優だけじゃ食べていけなくて」

すると最年長のリーダー格・マダムKが、「ファンクラブ作らない? 私、会長!」。賛成、賛成、と盛り上がり、「女優Mファンクラブ」なるグループLINEが作られた。メンバーは11名。Mさんも嬉しそうだ。

講座が修了した後も、食事会やバス旅行などの交流が続く。ある晩、グループLINEに久しぶりにMさんからの投稿があった。「舞台が決まりました! チケット代5000円、場所は……」

既読がつくと同時に乱れ咲く「おめでとう!」のスタンプ、「絶対行きます!」とのコメント。私もすぐさま「行きます!」と返信した。添付されたチラシ画像を見ると、宣材写真のMさんは格別に美しい。夢実現の第一歩に立ち会えると思うと、心が躍る。