「ダニー・ボーイ」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「テネシーワルツ」……。ジャズの名曲をおさめたアルバムが発売されるや、その歌声に魅了される人が続出し、コンサートは満員となる。齋藤悌子さん、88歳。日本最高齢のジャズ・シンガーだ。彼女の人生の物語を聞いた(構成:篠藤ゆり 撮影:木村直軌)
毎日欠かさないボイストレーニング
18歳の時に沖縄の米軍キャンプ内にあるクラブでジャズを歌い始めて、今年でちょうど70年になります。音楽から離れていた時期もありましたけれど、70代半ばから再び歌い始めて、2年前の2022年には初のアルバムをリリースすることができました。
娘の「ママの歌を残したい」という後押しもあって実現しましたが、まさか86歳でこんなことが起こるなんて、自分が一番驚いていますね。
その後はテレビ番組で取り上げていただいたり、地元の沖縄、福岡、東京でコンサートツアーを行ったり。今年4月のツアーでは、福岡、兵庫、東京の3ヵ所を訪れ、毎回たくさんのお客様が来てくださいました。神戸から東京までは新幹線で移動しましたが、それも88年の人生で初体験。速くて驚きましたよ。(笑)
1時間半のコンサートでは、アルバムにも収録した、私が愛してやまないジャズのスタンダードナンバーを披露しました。かつて米軍キャンプでジャズを歌っていた頃は、みなさんお酒を召し上がりダンスをしているので、高揚感のあるなかで歌えました。
でも大きなステージで歌うとなると、そうはいきません。みなさん集中して聴いていらっしゃるので、やはり緊張しますね。今年89歳という年齢のせいか、石垣島に戻るとぐったり。かかりつけ医のところに行って、「元気の出る点滴、打ってください」とお願いします。(笑)