(イラスト:カワムラナツミ)
警察庁が発表した「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」によると、特殊詐欺の認知件数は19,038件で、被害額は452,6億円と、前年に比べて増加してます。中でもオレオレ詐欺は認知件数3,955件と、前年よりも332件減少するも、被害額は133,5億円で4,1億円の増加に。1件当たりの被害額が大きくなっており、より一層注意が必要です。自分は大丈夫と思っていても、身内からの急なSOSに疑いの目は向けづらいもの。丸山幸子さん(仮名・埼玉県・主婦・66歳)は、ようやく子育ても終わり、余裕も出てきたと思った頃、なけなしのお金を失うことになったそうで──

考える隙を与えない電話の声に急かされて

2人の息子は自立し、親のお金をあてにしたことはなく、「親に何百万円も頼むことは絶対にない」と言っていた。

怪しい電話がかかってきたら、慌てず息子の番号にかけ直して確認すればいい。絶対に振り込め詐欺になんてひっかからない――そう思っていたのに、私は150万円を掠め取られた。

電話の相手は用意周到に獲物を狙っていたようだ。5月のある夜、夫が電話に出ると、相手は次男の名前を名乗り、携帯を失くしたので借りた電話を使っていると話した。

翌朝、今度は私が電話に出ると、次男を騙る男はこう言った。

「すぐに100万円用意してほしい」

運の悪いことに男の声は次男とイントネーションがよく似ていたので、私はすっかり相手を信じ、馬鹿な親心が働いた。

今まで一度も親にお金の無心をしたことがない息子が頼んできたのだから、よほどのことだろう。