今注目の書籍を評者が紹介。今回取り上げるのは『ラボっ子 旅に出る。ー異文化をめぐる50年、そしていま』(神山典士 著/冨山房インターナショナル)。評者は書評家の東えりかさんです。

50年続く、子どもたちが英語や国際交流を学べる場

幼い頃から国際交流の場を経験し、異文化に触れるのが良いことはわかる。近年インバウンドが進み外国人に接する機会は増えたが、何をどのように学んだらいいのだろう。

そんな学びの場を提供する活動を50年以上続けてきた(株)ラボ教育センターが主催する「ラボ・パーティ」の存在を、本書で初めて知る。全国に存在していると聞き、自宅近くを検索したら驚くほどたくさん存在していた。

著者は、1974年に14歳で第3回ラボ国際交流に参加してアメリカにホームステイしたノンフィクション作家。この団体で何が行われているか、どのような変遷を辿ったかを体験者の手記とともに明らかにしたルポルタージュだ。

ラボ・パーティの会員は「ラボっ子」と呼ばれる。0歳から入会可能で、大学生までが年齢関係なく同じラボ・パーティに所属して英語に親しんでいく。

このシステムが始まったのは66年。東京オリンピックが大成功をおさめ、高度成長期まっ只中という機運に満ちた時期だ。

国際化のために必要なのは英語。その新しい教育メソッドとしてラボ・パーティは作られた。「5歳から英語を始めましょう」などのスローガンのもと、大学の英文科卒女性がテューター(指導者)になり、会話や物語を使って自主的に英語を学ぶ方法を作り上げた。

72年にはすでにアメリカ農務省などが管轄する最大の青少年教育組織「4Hクラブ」と連携して、ラボっ子たち149名がアメリカでのホームステイに旅立ち、現在まで6万人が参加している。親子でラボっ子という家庭も少なくない。

開始から50年。コロナ禍で一時中止されたものの、この国際交流は今も続いている。

掲載された体験記が興味深い。面白いことに50年前も今も子どもたちの感動は変わっていない。その経験と恵まれた環境を大いに利用して、未来の国際交流に役立ててほしい。