(写真提供:Photo AC)
1990年代半ばから2000年代初頭に就職活動をした「就職氷河期世代」は、2024年時点で30代の終わりから50代前半にあたります。今も多くの問題を抱えており、厚生労働省が様々な支援を続けています。このような状況のなか、労働経済学を専門とする近藤絢子教授は「コロナ禍の経済活動への影響が落ち着いた今、改めて就職氷河期世代に目を向けなおすべき」と語っていて――。そこで今回は、近藤教授の著書『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』から一部引用、再編集してお届けします。

就職氷河期世代観の変遷

就職氷河期世代がこれまでどのように語られてきたかを振り返ってみたい。

「就職氷河期」という言葉がメディアに登場してから四半世紀の間に、この世代に対するイメージはどのように変わってきたのだろうか。

新規学卒者の就職率は1993年以降急速に落ち込んだ。その結果、90年代半ばにはすでに、学校を卒業しても正社員の仕事に就かずアルバイトで生活する、いわゆる「フリーター」の増加が社会問題となりつつあった。

それと同時に、就職難にもかかわらず、せっかく就いた仕事をすぐにやめてしまう若者の増加も問題となっていた。

この離職率の高さのせいか、1990年代のうちは、若者の失業や非正規雇用の増加の原因を、若者の意識の変化に求める見方が多かったように思う。