改めて目を向けなおすべき時

しかしその後、2011年の東日本大震災とその後の復興を経て、若年人口の減少による需給バランスの変化もあって若年の雇用状況は改善し、世間の関心は高齢者の雇用機会確保や女性の就業促進に移っていった。

そして気がつけば、他の世代との格差が埋まらないまま、就職氷河期世代は40代になっていた。

親世代の介護の問題や、氷河期世代自身の老後不安が顕在化して、再び注目されるようになってきたのは2010年代後半のことだ。

そして2019年に、「就職氷河期世代支援プログラム」が、政府による3年間の集中プログラムとして立ち上げられた。

しかし2020年に始まった新型コロナウイルスの世界的な蔓延(まんえん)と行動制限によって、飲食業や観光産業など特定の産業が大きなダメージを受けると、就職氷河期世代の問題はその対策の陰に霞(かす)んでしまった感もある。

コロナ禍の経済活動への影響が落ち着いた今、改めて目を向けなおすべき時にきているのではないだろうか。

※本稿は、『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(著:近藤絢子/中央公論新社)

バブル崩壊後の不況期に就職活動をせざるを得なかった「就職氷河期世代」。

本書は1993~2004年に高校、大学等を卒業した人々を就職氷河期世代と定義し、雇用形態や所得、格差などを統計データから明らかにする。

データから見える現実、講じ得る支援策とは。