『柚子のパウンドケーキ』
『柚子のパウンドケーキ』(撮影:鍋島恭徳)
『婦人公論』(2024年12月号)の料理連載「お料理歳時記」では、「みりんを使ったお菓子」を特集! 和食を作るときに活躍する、日本伝統の発酵調味料である本みりん。その新しい可能性と魅力を見つけた洋菓子研究家の小黒きみえさんに、ほんのり和が感じられるお菓子の作り方を習います(撮影=鍋島恭徳 構成・スタイリング=野澤幸代)

本みりんの風味が、洋菓子に味の陰影を与えてくれる

最近は洋菓子を作る際、砂糖の代わりにメープルシロップや蜂蜜を使うことが増えてきました。お料理にしても甘みを強く感じる砂糖より、複雑な甘みで独特の風味を持つ本みりんに魅力を感じます。いつも思うことですが、質のよい調味料は少量でも旨みをもたらす効果が大きく、代用になるものがありません。そういう点でも、本みりんの持つ力は絶大ですね。

今回、みりんを半量まで煮詰めた「みりんシロップ」をお菓子に使ったのですが、コクのある甘さによって風味が深まり、しっとり濃厚な口当たりに仕上がりました。日を追うごとに熟成していく味わいも気に入っています。

みりん特有の和の風味も、洋菓子に味の陰影を与えてくれますね。特性が一番感じられるのがホットケーキ。焼くことによってみりんの持つ香ばしさが最大限に引き出されます。また、マドレーヌの隠し味に使った醤油にはバニラの香気成分と共通するバニリンが含まれ、みりんととてもよく合います。

年末は柚子のパウンドケーキを焼いてシュトレンのように少しずつ味わったり、クッキーを作って手みやげにしたり。日持ちがするのでそんな楽しみ方もできそう。ドライフルーツのコンポートはおせちの箸休めにもなりますよ。

小黒きみえさん
今回パウンドケーキに使った柚子ピールは小黒さんの手作り。質のよい柚子が出回り、庭になった柚子をいただくことも多い12月は、柚子ピール作りのハイシーズン。甘さ控えめでほろ苦さを適度に残せば、アペロにもぴったり(撮影=鍋島恭徳)