大切な人との死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみを癒やすサポートを「グリーフケア」と呼びます。関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」の坂口幸弘さんと赤田ちづるさんは、大学で教育や研究をするかたわら、病院や葬儀社と連携してグリーフケアの支援活動を行っています。今回は、お二人の著書『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』から、死別と向き合い、再び歩き出すためのヒントを一部ご紹介します。
悲しみよりも怒りの感情を強く感じる
大切な人の死に直面して経験する感情は、悲しみばかりではありません。
どんなことに対しても腹立たしく感じることがあります。
理不尽に思える現実に対して、やり場のない怒りを感じることは、けっして特別なことではありません。
死の状況によっては、悲しみよりも怒りの感情を強く感じてしまうこともあるでしょう。
自分の今の気持ちや苦しみをわかってくれない周囲の人たちに、苛立ちを感じることもあれば、医療者などなんらかの形でその人の死にかかわった人に対しての怒りがおさまらないこともあったりします。
夫を大動脈解離で亡くした60代の女性の言葉です。
「スーパーで、一緒に買い物をしているご夫婦を見て、どうして私だけがこんな思いをしなければいけないのと、手にもっていた大根を投げそうになりました。周囲を見渡せば、夫婦がたくさんいるんです。けんかしている人もいるし、憎みあっている夫婦もいる。だけど皆さんはパートナーが生きている。なぜ私だけが……と腹が立ってしかたがない」
このように話されているときも、腹立たしさを隠せないという様子でした。