俳優の榊原郁恵さん(右)と婦人科医の高尾美穂さん(左)(撮影:浅井佳代子)
女性の体は年齢とともに変化し、さまざまな不調を感じやすくなるもの。「仕事を続けるためにも、調子のいい状態を長く保ちたい」と話す俳優の榊原郁恵さんが、婦人科医の高尾美穂さんに心と体をいたわる「セルフケア」の極意を学びます(構成:内山靖子 撮影:浅井佳代子)

50代以降に増える不調の原因は

榊原 昨年、65歳になりました。これまでずっと健康そのものだったので、年齢を意識して「老いたなあ」と感じることはないんです。自分の体調に関して、少し鈍感なのかもしれません。

高尾 それだけ元気な証拠でしょう。50代以降になると、多くの女性が心身のさまざまな不調を訴えます。不調を感じないのはいいことですよ。

榊原 あ、でも……昨年、舞台のお仕事をしている最中に腰が突然痛くなったんです。今までに経験したことがないような痛みで、靴下をはくのも不自由になっちゃって。以前はそんなこと、まったくなかったのに。こんなふうに、急に不調を感じることもあるんですね。

高尾 腰の痛みは、女性ホルモンの減少も関係しているかもしれませんね。10歳頃から50歳頃までの約40年間、私たちの体を守っていた女性ホルモンが閉経あたりでほぼゼロになり、自分の体を守ってくれる働きがなくなります。でも、なかなかそのことに気づきませんよね。

榊原 なるほど。私たちの体は、それだけ女性ホルモンに守られていたんですね。

高尾 おっしゃる通りです。女性ホルモンがなくなると、郁恵さんのような関節の不調のほか、筋肉量が減ったり、骨がもろくなって骨折しやすくなったりします。また、血管のしなやかさを保つコラーゲンが減少し、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まる。

また、自律神経のバランスが崩れ、疲労感や頭痛、めまい、便秘・下痢などを起こすこともあります。そのほか肌や粘膜の乾燥・不快感、排尿トラブルなど、加齢による体の変化が顕著になっていくんです。

榊原 年をとりたくてとっているわけじゃないのに、そんなに不調が出てくるなんて、なんだか悔しい!

高尾 安心してください。「年だから仕方ない」と諦めず、女性ホルモンの代わりに自分で自分の体を守るセルフケアを身につければ、人生後半を悩み少なく過ごすことができますよ。