難関私立の開成(中学・高校)に進学、現役で理系の最高峰である東京大学理科一類に入学。同大学院に進み情報理工学系研究科創造情報学を専攻して修了。研究者になる道もあったが、クラシックピアニストとして世界各地のコンサートで大好評を博している。2024年、自身の誕生日である7月14日に日本武道館でコンサートを開き、ピアニスト単独公演の動員数としては最高の1万3,000人に及ぶ観客を魅了した。YouTubeチャンネルにCateen(かてぃん)名義で演奏をアップして、登録者数は144万人(2025年2月現在)。作曲や編曲も手がけ、ジャンルを問わず幅広く活躍の場を広げている。
「異端」というよりも「天才」なのではないか?角野さんの魅力を探るべく、お話をうかがった(構成:しろぼしマーサ 撮影:本社・武田裕介)
活動の原点
「異端」というか、僕はクラシックの世界の淵にいて、バランスを考えながら、その世界を拡げようとしているのです。クラシックを土台にして、新しいことに挑戦したい。
音楽家というと神経質なイメージをもつ方がいますが、僕は神経質な性格ではありません。神経質だったらあちこち旅をできないでしょう。まわりのことを気にしない。クールに振舞っているように見えるらしいけれど、外国の人から「クールの中では一番温かい」と言われたことがあります。(笑)
母親の角野美智子さんはピアノ教室の教師で、妹の角野未来さんもピアニストである。角野さんは、幼い頃から数々のピアノコンクールに入賞していた。
幼い頃から数字に興味をもっていたのですが、母がピアノを教えていたので、自宅にグランドピアノがあり、自然に弾き始めました。母は違うのですが、僕は絶対音感をもっていて、自分で自由に曲を作って弾いていました。しかし、音楽の基本の理論を教えてくれたのは母です。妹もピアニストになりました。
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父は趣味でサックスを吹くのですが、音楽の話となると、母と妹と僕はピアノの話で盛り上がってしまうので、父は蚊帳の外で気の毒でしたね(笑)。母はよく僕のコンサートに来てくれますが、感想はファンの方と変わりません。
僕は自分のことは自分で決める子どもでした。でも、中学は男女共学に行きたかったのですが、男子校である開成中学に入学することは、なんとなく母にうながされたようです。結果的に開成(中学・高校)に行って良かった。スポーツ、ジャグリングなど、何かにものすごく熱中している生徒が多くて、僕は音楽ゲーム(音ゲー)にはまりました。バンド演奏とYouTubeもやっていて、楽しかった。

東京大学大学院では、機械学習による自動採譜と自動編曲を研究していました。研究者になろうかピアニストになろうかとすごく迷いました。大学院1年のとき(2018年)に4万人以上が参加したピティナ・ピアノコンペティションの頂点である特級で優勝したことが、ピアニストになろうと思ったきっかけです。