2025年3月26日放送の『徹子の部屋』に出演する、書家・金澤翔子さんと母・金澤泰子さん。翔子さんはニューヨークで個展を開くなど世界的に活躍する傍ら、2024年12月には喫茶店「アトリエ翔子喫茶」をオープンし、活動の幅を広げています。今回は、母・泰子さんが翔子さんとの日々を綴った『いまを愛して生きてゆく ダウン症の書家、心を照らす魂の筆跡』から、一部を抜粋してお届けします。

親子の世代交代

翔子が聖火ランナーに選ばれたので、マラソンの練習に久々に多摩川土手に二人で行った。小さい頃は駆け足が下手で、私に激励され泣きべそをかきながら、この道をよちよちと後ろから付いて来ていた。

けれど今は、ダイエットをしているので逞(たくま)しく、私をひきはなし駆け抜けていく。よちよちと可愛かったのが、つい先日のように思う。

か弱かった娘は背筋を伸ばして私を追い越して行く。私はもう追い付けない。いつの間にか私は駆け足ができなくなっていた。だんだん離れて行く娘。

歳月が経ったのだ。老いてフェードアウトする私、晴れの人生の舞台にフェードインする娘。夕暮れ刻(どき)の細く長い一本道で、親子の世代交代のドラマが粛々と展開している。母さんを待たなくていい。遥か遠くまで行きなさい。