「子どもの頃からの遊びが今に繋がった……というよりは、思い出したというほうが近いですね。社会人になりデザイナーとして働いていた頃は、そんな遊び方をしていたことを忘れていましたから」(写真提供:田中さん)
ブロッコリーは木に、メガネを自転車に……。見慣れた日用品や食材を何かに見立てて、ユーモアのある写真に仕上げる田中達也さん。その作風はどのように生まれたのでしょうか。作品の原点と田中さんの制作への思いに迫ります(構成:藤栩典子)

ちょっとした発見が面白い

――本誌の連載「ミニチュアの世界」が最終回を迎えました。初回は雪化粧した樹木に見立てたカリフラワー。以降、トランプの赤と黒のマークをひな人形に、かき氷を積乱雲にと、四季を感じる見立て作品が登場しました。この連載を通して意識されたことは何でしょうか。

毎号、これまでに撮った写真のなかから季節に合ったものを選び、その作品についての文章を書いてきました。書くことでアイデアの整理になりましたし、作った意味みたいなものをあらためて考える機会になったと思います。

作品を作ったあとにタイトルを考えるのはいつも通りですが、文章をつけたのは初めて。題材との親和性を考えながら書いていきました。連載を通じて、一つの作品に対し説明をしっかり加えられるなという手ごたえが、展覧会でも解説をつけるきっかけになったと思います。

 

――掲載された全39作のなかで、思い出深い回はありますか。

思い出深いもの……。そうですね、「恵方巻き」の解説が一番好きです。短いなかでも、最初に引きがあって、うまく落ちを作れたので面白く書けたなと思います。気に入って、展覧会でも採用しました。