(イラスト:いだりえ)
できなくなることが増えると、過去を思い返して「昔はよかった」とくよくよしてしまうもの。僧侶の名取芳彦さんは、日々のちょっとした練習で少しずつ執着から「解脱」することができると説きます(構成:野本由起 イラスト:いだりえ)

《ベキベキ星人》を卒業する

仏教の目指すところは、心おだやかに生きることです。とはいえ、その境地に至るのは簡単ではありません。

なぜなら人は、すぐに負の感情に支配されてしまうからです。ネガティブな感情にとらわれることを、仏教では「執着(しゅうじゃく)」と言います。「執着」は、言い換えれば「こだわり」です。

「こうあるべき」「こうすべき」と固執し、自分が決めたルールにがんじがらめになっている人のことを、私は《ベキベキ星人》と呼んでいます。こういう人は、ルールから外れた人を見ると心おだやかでいられません。

たとえば、「掃除は常に完璧にするべき」と考える人は、散らかった場所を見ると心が乱れ、「どうして片づけないんだろう」とイライラします。ですが、他者を思い通りにすることなんてできませんし、自分だっていつまでも完璧でいられるとは限りません。

《ベキベキ星人》でいると、まわりまわって自分のことまで許せなくなるという最悪のシナリオが待っているのです。