(イラスト:名取芳彦)
できなくなることが増えると、過去を思い返して「昔はよかった」とくよくよしてしまうもの。僧侶の名取芳彦さんは、日々のちょっとした練習で少しずつ執着から「解脱」することができると説きます(構成:野本由起 イラスト:いだりえ・名取芳彦)

前編よりつづく

暮らしの中で感性を磨く練習法

《毎日、人を褒める》

他者に関心を持たなければ、人を褒めることはできません。私は、訪ねてきた檀家さんを玄関で出迎える際、その人のいいところに気づこうと、全力で観察します。

「おしゃれなスニーカーを履いていますね」など、たったひと言でもかまいません。相手のいいところを見つけて、嘘やお世辞ではない、本心からの言葉を伝えましょう。

 

 

《ものに触って、五感を研ぎ澄ます》

私は犬の散歩に出かけた際、いろいろなものを手で触るようにしています。

桜のつぼみに触って「そろそろほころんできたな」、公園の水道水に触って「だいぶ冷たさがゆるんできた」と感じる。

こうして季節の移り変わりを五感で感じるのも、感性を磨く訓練になります。デパートの和菓子売り場を覗いて、季節を感じるのもおすすめです。

 

 

《起きた出来事を人に話す》

その日外出して最初に出会った人に、朝起きてからそれまでに起きた出来事や感じたことを簡単に話しましょう。

「今朝外を見たら、大きな霜柱が立っていたよ」「積もった雪に触ったらきれいに手形がついて、怪獣の足跡みたいになった」など、ちょっとしたことでかまいません。

家族以外の誰かに、数十秒で話す癖をつけると、何気ない風景から何かを感じ取る「心のアンテナ感度」を高めることができます。