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店の利用客から従業員が迷惑行為を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題として注目されています。4月1日から、全国初のカスハラ条例が東京都や北海道などで施行されました。「悪質なカスハラ」と「耳を傾けるべき苦情」の違いに悩む方も多いのではないでしょうか。大手百貨店で長年お客様相談室長を務め、現在は苦情・クレーム対応アドバイザーとして活躍する関根眞一さんは「カスハラに対抗するためには実態を知り、心構えを持つことが必要」と指摘します。そこで今回は、関根さんの著書『カスハラの正体-完全版 となりのクレーマー』から、一部引用、再編集してお届けします。

突然の電話

転務して5日目の出来事でした。交換手から電話が入り「お客様相談室長を出せ」とのことです、と。電話に出て「おはようございます。関根です」と挨拶すると、「誰だ、お前は」と無礼な先制攻撃。「お客様相談室長の関根と申します」「川崎はどうした」と前任者の名を出します。

「転勤いたしました」「挨拶がなかったな」「そうですか、それは伝えておきます」「いま、そっちに向かっている。傘の柄にヒビがあり、高速道路で向かっている。女の係長が『持って来い』と言った。どうなっているんだ、お前の会社は、客を客とも思っていないのか。40分くらいしたら着く」「どちらでお待ちしていたらよろしいですか」「駐車場を用意しろ、着いたら電話する」プツッ、と切れました。

交換手経由の電話だったので携帯電話の番号も分からず、待つことにしました。しかし、これだけの会話でも、面倒なクレーマーであることは分かります。

まず、声に張りがある、これは押しの強さに通じます。会話の中でわざわざ「高速道路」と言ったのは、有料道路を走っているので、その通行料も補償しろという意図があるのでしょう。さらに、「駐車場を用意しろ」は、相当内情に詳しい証拠です。その日は土曜日で一般客用の駐車場は混んでいました。おそらく、来賓用の駐車場に車を止めるつもりなのでしょう。