5月号の書は「お転婆」です。
私の人生はお転婆そのもの
以前、私が車を運転しているのを見かけて、「ずいぶんお転婆ねぇ」と言った人がいました。私は「失礼ね。お転婆って、転がる婆さんって書くのよ」と返したのですが、「お転婆」という言葉がけっこう気に入ったのです。そこでテレビ番組で、「転がる石には苔が生えぬ」という外国のことわざをもじって「転がるバァさんには苔がつかない」と語ってみたり。ちなみに「転がる石には……」は、「生き生きと活動している人は、時代に取り残されることがない」という意味もあるようです。
「お転婆」は江戸時代からある言葉で、国語辞典『大言海』を編纂した言語学者の大槻文彦さんはオランダ語の「ontembaar(オンテンバール)」からの借用だという説を唱えています。ちなみにオンテンバールというのは、「不屈の」「飼いならせない」といった意味だとか――。
話は飛びますが、2009年、舞台上で衣装の裾を踏んで転倒し、右手首を粉砕骨折してしまいました。かなりの重傷でしたが、私は「これで本当のお転婆ね」などとジョークを言ったりしたものです。
怪我や病気をした人をどう慰めたらいいのかは、悩ましいものです。そこで「こんなにつらい」「苦しい」と言い募ると、相手もどう接していいかわからなくなります。つらいときこそちょっぴりユーモアをきかせてジョークのひとつも言うと、まわりの人は少し気持ちが楽になるはず。つまり、ジョークは他人への気遣いでもあるのです。
お転婆がもし「不屈の」や「飼いならせない」という意味を含むオランダ語からきているのだとしたら、まさに私の人生はお転婆そのもの。この先も一生、苔がつかないように、転がっていくつもりです。
●今月の書「お転婆」

「あなたの人生を導く-美輪ことば」(著: 美輪明宏/ 中央公論新社)
「微笑みは開運の鍵」
「ルンルンルン」
「自分にも感謝を与えてください」
「地獄、極楽は胸三寸にあり」
美輪明宏さんが89年の人生をかけて大切にしてきた言葉が満載!
~~~自筆の「書」とともに綴る愛のエッセイ!~~