歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
3月号の書は「いたわり」です。

《いたわり》には想像力が必要

いたわりとは、人の苦労や悲しみを察して、やさしく慰めること。「思いやりの心で接する」と言い換えてもいいかもしれません。

この人は、何を思い悩み、なぜつらい気持ちでいるのか。無理やり聞き出すのではなく、その人の言動や状況、気配から察し、「だったら、こうしてあげよう」「こんなことを言ってあげよう」と気を配る。それが、いたわりです。

人をいたわるには、相手の見えない部分を見る必要があります。つまり、想像力が必要なのです。たとえ自分が経験していないことでも、想像力を働かせたら、相手の経験してきたことを感じ取ることができ、相手がそこで得た感情を共有できます。ひとことでいうと、「相手の身になって考える」ことができるのです。すると、今、この人には何が必要か、おのずと見えてくるはずです。

「どうしたの?」などとずけずけと相手のプライバシーに分け入るのは、いたわりの精神に反します。そういった無神経な態度は、相手の心の傷を広げたり、場合によっては恥をかかせることになりかねません。ときには、何も言わずただそばにいてあげる。相手が話す気になるまでこちらからは何も聞かず、美しい音楽が流れる部屋でおいしいお茶とお菓子を振る舞うーーそんなさりげない振る舞いが、何よりのいたわりになる場合もあるのです。

想像力を鍛えるには上質な本を読み、映画や芝居を観るなどしてさまざまな人生を追体験するのも役に立ちます。自分が経験できる物ごとの量はたかが知れていますが、栄養をたくさん吸収することで、人の心に対して敏感になれるはず。心の栄養を十分にとって、想像力を養い、いたわりの心を育てましょう。

 

●今月の書「いたわり」

いたわり(書:美輪明宏)
(書:美輪明宏)

あなたの人生を導く-美輪ことば」(著: 美輪明宏/ 中央公論新社)

「微笑みは開運の鍵」

「ルンルンルン」

「自分にも感謝を与えてください」

「地獄、極楽は胸三寸にあり」

美輪明宏さんが89年の人生をかけて大切にしてきた言葉が満載!

~~~自筆の「書」とともに綴る愛のエッセイ!~~