(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
人間関係や生き方・働き方などに、悩みや不安を抱えて生きている人は多いことでしょう。産婦人科医の高尾美穂さんは、長年さまざまな患者の心と体に向き合ってきた経験から、「ひとりひとりが自分の人生をよりよく生きられるヒント」をアドバイスしています。今回は、そんな高尾さんの著書『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』から一部を抜粋しお届けします。

私が産婦人科医になったわけ

名古屋での研修医時代はさまざまな科で学びました。じつは、内視鏡科に進みたいと思っていたんです。なぜかというと、CTやMRIの画像など間接的ななにかを見て診断をつけるという方法よりも、内視鏡のように直接自分の目で見て判断するほうが自分の性格に合っているのではないかと思っていたからなんです。

実際、内視鏡を扱ってみて、わりと手先の器用なほうでしたし、胃カメラのスキルが身についていくのもうれしかったです。ただ、内科や外科など他の科から依頼を受けて検査をして診断がついたら、依頼元に戻っていく、そんなふうに、患者さんが自分の目の前を通過していく科だ、と感じました。なんとなく自分が思っていたイメージとは違うなと思いながら、内視鏡科での研修期間を終え、次の研修先が産婦人科でした。

医学生の頃、産婦人科医になろうと考えたことはなかったのですが、産婦人科で研修医として働くうちに気づきがあったんです。私はきっと、医師として一人の患者さんを長く診ていくことを望んでいるのだということです。

産婦人科は赤ちゃんが生まれるところから、生理が始まる思春期、子どもを欲しいと思ったとき、妊娠したとき、出産、そして更年期以降まで、一生をとおして困ったときや悩んだときにサポートをすることができます。

それ以外にも、たとえば、婦人科がんを診断するのも、手術をするのも、抗がん剤等の治療や緩和ケアをするのも、そしてお見送りするのも産婦人科です。一つの科の中で幅広く人の一生に伴走していくことができる科だと感じました。やりがいを強く感じた記憶があります。

そして、産婦人科だけは「一人で入院をしてきて赤ちゃんと二人で退院していく」ことが、当時の私にとっては大きな喜びだったような気がしています。産婦人科の恩師も素敵な先生でした。看護師さんたちとよいコミュニケーションを築けている私に、女性を相手にする産婦人科に向いていると何度も話してくださったから今があります。