病気やケガで通院した後の在宅医療の支援であれば、病院の「医療連携室」などの窓口へ。認知症で要介護認定されれば「地域包括支援センター」へ。……基本的には主治医からの紹介先や案内があれば、そちらに向かえばいいわけです。
ただ複数の窓口に混乱したり、そもそも主治医からの紹介先が遠かったり、複数の病状に悩むケースもあるでしょう。
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている読者の方への駆け込み寺:【おとなの相談室】の先生として答えてもらうのがこの連載です。
専門の「在宅看護」を主軸に、切っても切り離せないメンタルケアを含めて、質問していきます。第15回の今回は、「認知症」の方とのコミュニケーションについてです。
(構成:野辺五月)
気を付けたい「薬との付き合い方」
Q:同居している母の記憶が最近ちょっと危うく……病院を訪ねたところ、軽度の認知症の診断が出ました。今はまだ大丈夫だと思うのですが、今後を踏まえて、どうやってコミュニケーションをとっていけばいいのか。
今の段階によるアドバイスをいただきたいです。
A:まず、同居人として不安や焦りもあるかもしれませんが、年をとって認知機能が落ちていくのは普通のこと。どっしりと構えていきましょう。
もちろん、認知機能が落ちる速度を緩やかにさせるか、加速させるかは、環境が大きいのも事実。正しい知識と、助けてくれる外部を知りましょう。
いくつかに絞ってお話ししますね。
まず、気を付けたいのが、「薬との付き合い方」です。
特に高齢者の場合はですが、どうしても薬の量も増える傾向にあります。
気を付けたいのが「飲んだか飲まなかったか」分からなくなること。誤って二度、三度飲んでしまったり、全く飲まなかったり……これでは、他の病状も改善しません。
そこで、必要なのは「飲めるように工夫してもらう」ことです。
自分たちで工夫するのではなく、まず「お医者さんに工夫してもらう」のです。
例えば、1日3回指示通りに飲めなくなるかもしれない……そんなときは相談しましょう。「1日1回にできないか?」「薬をまとめられないか?」です。
いっぱい薬を出してもらわないようにすることが先決なのです。じゃらじゃらとバラバラで出てくる薬をなるべく整理してもらうこと……。きちんと要望を伝えて相談しましょう。
そんなこと患者側から言っていいのかと思われるかもしれませんが、(症状や状況によっては無理なこともありますが)先生からしても「飲んでもらいたい」のですから、状況をしりたい・解決策を与えたいのです。
一番困るのは「薬が出されっぱなし」「荷物(ゴミ)になってしまう」こと。
診察する側としても診断の意味がなくなってしまうことは避けたいわけです。
医療費の無駄にも通じますし、ここはきちんと相談してみてください。
上手く飲みきれなかったり、不規則になったりしていないか……家族として確認できる体制も大事です。正しく把握し、素直に伝えて、指示を仰ぎましょう。
とはいえ、薬がどうしても減らない、時間が確り決まってしまう場合も勿論あります。
その際は、次に「ドラッグストア」や「地域の薬局」を頼りましょう。
実は、政府が「街の薬局を頼ってもらう=掛かりつけ薬局を作っていく」ことを推進していまして、これらの薬局を応援する形で、報酬・補助を始めています。
具体的には、患者側の相談に乗ったり、残った薬の確認をするなど……最近の薬局は積極的に動き出しています。お薬カレンダーを色分けしたり、一包化したり……頼れる場所はあります。自分達で全部動く前に、活用していきたいところです。
また、ITも活用しましょう。お薬ロボットや自動服薬システムのように、決まった時間に、薬を出してくれるものもあります。(レンタル・購入可)
まだまだ認知機能が高いうちは、携帯のアラームなどでも対応できますが、いよいよのときのために外部のサービスを調べておきましょう。これについては、地域や予算感によって違うので、「地域包括支援センター」、それが近くになければ、近隣の役所までお問い合わせください。
→ ポイント:「頼れる場所がある」を活用する
一番大切なのは「薬」との付き合い方