コミュニケーションのコツを知る!

気を使いすぎる必要はありません。ただ気を付けたい点は確かにあります。
それが「焦らせない」ように話すこと。

内容以前に「脅さないこと」が大切です。

大きな声を出したり、急に姿を現したり、いきなり声をかけたり……びっくりさせないようにしましょう。特に身内だと苛立ったり、怒ったりという気持ちがわくのも分かるのですが、責めたり怒ったりの態度は、相手を委縮させ、引きこもらせたりネガティブにさせたりすることはあっても、プラスに働くことはありません。改善どころか、マイナスに働くだけです。

まずはおおらかにゆっくりと……をこちらが意識していきましょう。
何より「否定しないこと」が大切なのです。

「そんなことあるわけないじゃん」「気のせいよ」など……自然と口に出してしまう言葉にも否定は隠れています。

本人の体験は本人のものだから、気のせいでも、嘘でもないのです。
事実・現実とズレることはありますが、否定されると相手も悲しい気持ちになってしまいます。

周りがコミュニケーションを図るときのポイントは一旦受け止めること。
全部を肯定する必要はありません。ただ頭から否定はしないで。

何なら全部ユーモアで逆転させる……面白おかしく展開して、笑い飛ばしていきたいくらいなのです。

イメージ(写真提供:Photo AC)

みんなどうしても深刻になってしまうので、自分達自身のメンタルにも引っかかってきてしまいます。どうすれば、深刻にならずに済むのか……ここを考えていきたいところです。

大変なのは分かりますが、「笑ったもん勝ち」の精神で、「笑いに変えていければ最高」です。

そこまでは無理でも、深刻×否定よりは、まだ「はいはい」と朗らかに流してしまう方がいいくらいです。

具体的な例をみていきましょう。

症状が大分進んでからの例になりますが、例えばトイレに自分でいけない・用を足せないとなっていってしまったとき、人によっては自分の書斎で用を足してしまうことがあります。

そんなときに、すぐに咎めたくなりますが、「そんなところにしちゃだめでしょう」と否定すると何が起きるでしょうか。

実はネガティブな刷り込みが起きてしまうのです。

「そこで、しちゃダメ」と連呼すると、「そこで」と「しちゃう」……が、逆に紐づいてしまう。強く脳に刷りこまれてしまうのです。

これは、ダメだダメだと脳裏で繰り返すことで、学習が働いて、深く刻まれていくことから起きる現象だそうです。

ダメだダメだと繰り返すと覚えてしまう……ならばどうすればいいのか?

この際の対処としては、「はいはい」、ってバケツを置いてあげるという方法があります。軽く流してくれることで、相手は自尊心も傷つかない。間違ったとしても、する先もあるので、実害も防げる。また自然と、失敗しなくなっていくそうです。

ダメと連呼されると、萎縮して、よりミスが誘発され……隠ぺいしようとします。
これが進むと、排泄物(便)を壁にぬったり、手で触ったりいじったりするネガティブな方向に加速してしまいます。

間違っても「はいはい」「あらあら」で流していきましょう。
「あらあら おトイレにいきましょう」と正解を教えて、連れていけば、「気持ちの悪いのは、この場所(トイレ)で何とかなるんだ」と学習していきます。

これは大分認知症が進んだ場合の話ですが、軽度の段階でも、「ダメ」という否定は、逆に学習され、行動が悪化していくケースが多く見られます。

特に、まだ認知機能が高く、きわにいる人こそ、「失敗した」経験を怖がり、引きこもったり喋らなくなったり……鬱になっていくケースが多くみられます。

そうならないように、またそういう傾向が見られるときほど、大切なのは「ユーモラスに接すること」。一緒に笑い飛ばせるように、間違ってはいけないという思い込みを此方が捨てることも、治療法の一つです。

家族など毎日24時間一緒だと厳しいところはあると思いますが、「はいはい~」「あらあら」で答えていく……家族側がそういう現実をまず「治療法」だと思って、引き受け、受けとめていきましょう。

相手を理解してあげるのは大変ですが、「治療法」として「軽やかに流す」「笑う」ことで対処していけるようにしていきましょう。