藤野千夜さん(撮影:宮崎貢司)K
NHKBSでドラマ化され、小泉今日子×小林聡美の名コンビが話題となった『団地のふたり』の原作者、藤野千夜さん。『団地のふたり』執筆のため、たくさんの団地を取材したといいます。『団地メシ!』は、そんな『団地のふたり』と、散歩好きなおじいさんが出てくる著作『じい散歩』のマリアージュだと語る藤野さん。小説に登場する団地やカフェは、全て実在するそうで――。(構成:瀧井朝世 撮影:宮崎貢司)

ひとり暮らしはとっても楽しい

3歳ごろから8歳ごろまで横浜の団地に住んでいました。50年くらい経ってから、そこを訪れてみたことがあります。棟数は減っていたものの自分が住んでいた棟はまだ残っていて、外壁が塗り直されて綺麗になっていました。

ちょうど引っ越さなくてはならず物件探しをしていた時期だったので、ここに住むのもありかな、と思ったんです。それが、幼馴染みの二人の団地暮らしの日常を描いた『団地のふたり』を書くきっかけだったように思います。

執筆にあたり、ほかにもいろいろな団地を取材してきました。その年の忘年会で、若いころから仲のいい友人の編集者に「うちでも何か書きませんか」と声をかけられて。

飲み会の軽いノリで「今書けそうなのは、いろんな団地に行って食べ歩きする話かな」と言ったら(笑)、その後すぐ「いつから書けますか」と連絡が来ました。それで、翌年の春先から連載を始めたのが、『団地メシ!』です。

16歳の孫・花と70歳の祖母・ゆりがいろんな団地を訪れて散歩する話です。ですからこれは、『団地のふたり』と、散歩好きなおじいさんが出てくる『じい散歩』をマリアージュさせた小説といえますね。(笑)

 

団地メシ!』(著:藤野千夜/角川春樹事務所)