90歳を超えても元気な人は、どのように体をいたわっているのか。1日のスケジュールから、長年続けていることまで、二人の人生の先輩に話を聞いてみると―(撮影:藤澤靖子)
娘と弟子に見守られ
東京・神楽坂の路地を抜け、公園で取材時間になるのを待っていると、建物の窓から笑顔で手招きしてくれる人がいる。誘われるままに階段を昇れば、そこは自然光の射し込むバレエスタジオ。片面の壁は大きな鏡、木の床からは使い込まれた風格が感じられる。
「建物は、間もなく築60年になるでしょうか。今もここで週4回、娘と一緒に初心者クラスを担当しています」と話してくれたのは、92歳の現役バレエ講師、雑賀淑子(さいがとしこ)さんだ。すらりと伸びた背筋はとても90歳を超えていると思えない。
「水曜日のマダムクラスでは、『背中の筋肉を鍛えると姿勢がよくなって若返るわよ』『膝が痛い時はこの動きがいいの』なんて、《おばあ》が《おばん》を指導しているんです(笑)」(雑賀さん。以下同)
大人の悩みに寄り添ったバーレッスンやストレッチは、雑賀さんのバレエ教室に生徒として通っていた整形外科の女性医師とともに考案したものだという。
「生徒に教えながら、私も一緒にストレッチをします。体が伸びて、気持ちがいいですよ」