「買い物は少なめに、せっかちに歩くのもやめました。レッスンでも家事でも、『疲れたな』と思ったら無理はしないことが大切ね」

朝食の後は、休憩がてら新聞を読むのが日課だ。

「朝ご飯の後が一番元気。大事な手紙を書いたり、お金の計算をしたり、大切なことは朝食後1~2時間にしています。それから買い物に行ったりして、お昼ご飯は刻んだ残り野菜を小麦粉でまとめた自家製のおやきと、スープ。

午後はレッスンをして、晩ご飯は22時頃。日本酒にお湯を3割ほど足して薄めたものに、好みのおつまみで軽く済ませます。それからストレッチをして、寝るのは23時半くらいかしらね」

そうして健康に気を配る雑賀さんだが、75歳の時には階段から足をすべらせて右脚を骨折。人工骨を入れるほどの大手術で、もう踊りは無理かと思われたが、「お医者様も驚くくらい、みるみる快復。さすが長年、鍛えているだけあると感心しました」と、うたこさんはいう。

去年は、コンビニでたくさん買い物をした後に出口で足をすべらせ、ひやっとしたことも。

「それに懲りて、買い物は少なめに、せっかちに歩くのもやめました。レッスンでも家事でも、『疲れたな』と思ったら無理はしないことが大切ね」

また、うたこさんが自分のバレエの活動で長く家を空ける時は、お弟子さんたちが気にかけてくれる。

「ある時近くの銭湯でゆっくりしていたら、電話に出ないことを心配して大勢家の前に集まっちゃって。私の顔を見て、『先生、生きてた!』ですって(笑)。でもありがたいわね。娘や生徒に見守られて、こうして一人暮らしを続けられているのですから」

92歳のバレリーナ・雑賀淑子さん・後編につづく

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