(画像:stock.adobe.com)
創刊以来、《女性の生き方研究》を積み重ねてきた『婦人公論』。この連載では、読者のみなさんへのアンケートを通して、今を生きる女性たちの本音にせまります。最近人気の大人の習いごとは、趣味として、スキルアップのためなど、取り組む理由も人それぞれ。今回は、教室・講座を選ぶ際に何を参考にしているかを聞きました。

5よりつづく

【回答者数】243人 【平均年齢】57.6歳
【回答者の内訳】20代以下…11人/30代…16人/40代…25人/50代…70人/60代…74人/70代…39人/80代…2人/90代…2人/不明…4人

子どもと同じ進歩でも

年齢を重ねてから、新たに習いごとを始めた人の実感は?過去の『婦人公論』に著名人が明かした心のうちをご紹介しましょう。

トップバッターは、1963年6月号に「五十のピアノ手習いの記」というエッセイを寄せた、作家の大岡昇平さん。

胃潰瘍で療養生活を送ることになった大岡さんは、ひまつぶしにピアノを始めることに。しかも、演奏と作曲を同時に学ぶという無謀とも言える挑戦です。

目標にぴったりの指導者を見つけ、始めたものの、なかなか上達しません。

〈四ヵ月経った現在やっとバイエルがあがりかけている程度で、私が十歳の子供とまったく同じ進歩の仕方しかしないのに〔先生も=引用者注〕少し呆れていられるようである。しかも毎日三時間から四時間、どうかすると六時間ピアノの前へ坐っていた結果なのだから、なんともおはずかしい次第である〉

一方、望外の喜びもあったようです。

〈ある日、中原中也の「夕照」に節をつけてみた。(略)実はそれを作るのに、中原中也論を書いている時にも感じなかったほど喜びを感じたのである。私の亡友に対する愛惜は自然に現われたし、彼の詩と人物を批判することが出来たような気がしたのだ〉

『婦人公論』1963年6月号。表紙は女優の岩下志麻さん