進路を考える学生(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)
進学、就職、将来設計――。いまの中高生たちは、かつて親世代が頼りにしていた「こうすればうまくいく」という成功モデルが通用しない時代を生きています。人口減少、AIの急速な進化、物価高といった激動の中で、何を指針に未来を選べばいいのか。思想家・内田樹さんは「自分が生きたいように生きればいい」と言います。答えのない時代に生きる中高生に向けた著書『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』より、中高生に向けた2022年1月12日の講演の一部を抜粋して紹介します。

隣の人に親切に

今、君たちを見て一番気の毒だなと思うのは、自分で進路を決められないということです。お金がかかり過ぎるから。

僕は1970年に大学に入りました。その時、国立大学の授業料は年間1万2千円でした。月千円です。

入学金が4千円でしたから、入学金と半期授業料の1万円で大学生になれました。今とは貨幣価値がだいぶ違いますが、それでも、大学一年の時の学習塾のバイトの時給が600円でした。

2時間働くと月謝が払えた勘定です。それに、1万円なら高校生だって持っていました。お年玉を貯めたら、それくらいにはなります。

だから、進学する時に、どうしてもやりたいということがあったら、親が反対しても、「自分で学費出すから」と言えた。

ですから、当時は「不本意入学」というのは少なかった。国公立大学であれば、親にお金を出してもらわなくても、好きな進学先を自分で選べた。