(イラスト:花松あゆみ)
初夢の夜、枕の下に入れる和歌「長き夜の―」や「竹やぶ焼けた」など、逆さに読んでも同じ音になる言葉、文、歌は「回文」と呼ばれ、古くから親しまれてきました。本誌2024年10月号では回文作家のコジヤジコさんが、回文の魅力と作り方をわかりやすくご紹介。その記事を参考に実践した読者から作品を募集したところ、416作が集まりました。コジさんに選ばれた12作品をお楽しみください(構成:本誌編集部 イラスト:花松あゆみ)

416作もの投稿が!

僕は普段、SNSを中心に自作の回文を投稿しています。交流するのはSNSを楽しむ世代だったり、回文愛好者だったりするので、『婦人公論』の読者の皆さんが本当に関心を持って回文作りに取り組んでくださるか、不安な思いもありました。それが蓋をあけてみたら、8歳から92歳まで、なんと416作もの投稿があったとのこと。嬉しかったですね。

目を通したところ、おそらく、はじめて挑戦された方がほとんどなのだろうな、という印象を受けました。というのも、回文作りにおいて定番とされる表現が多く見受けられたので。

たとえば「ミルク」と「くるみ」とか、「イタリア」と「(~で)ありたい」とか、「キス」と「好き」とか。最初から逆さまにしても成立する言葉から始めると、確かに作りやすい半面、言葉が意外な方向性に崩れないので、世界が広がりづらいのです。

そういう意味で、パズル的な面白さを持った回文は少なめでした。ただ、読者の皆さんの言葉選びの妙や感性に、より触れられた気がしています。短歌や俳句、詩を読んだときの感覚に近いかもしれません。

回文をAIで作るのは、まだ難しいのだそうです。ひっくり返しても意味が通るかどうか。日本語としてはちょっと破綻しているけれど、不条理な面白さがあるかどうか。そのあたりが、まだAIには判断がつかないのでしょう。回文は、極めて人間的な表現手段なのだな、と思わずにはいられません。