今年は戦後80年。第二次世界大戦に関する作品が次々と公開されている。歴史・時代小説の第一人者である伊東潤さんが、「戦艦大和」建造に関わった人々をモデルに、戦争や日本の物づくりへの万感の思いを込めて書き上げたのが『鋼鉄の城塞 ヤマトブジシンスイス』(幻冬舎刊)だ。刊行直前に本作への思いを聞いた。
(取材・文:婦人公論jp 写真提供:伊東さん)
(取材・文:婦人公論jp 写真提供:伊東さん)
製造業に携わる人たちへのエール
――今作も、作品に込められた凄まじい熱気に圧倒されました。
作家の題材に対する熱意が作品に籠もり、それが熱気を生み出します。この熱気こそ、エンタメ小説を支える大事な要素の一つです。今回は戦艦大和の建造という一大国家プロジェクトに懸けた人々を描くので、登場人物たちの「未曾有の戦艦を造るんだ」という熱意が、さらに読者に伝わったと思います。
技術的なことをマスターする必要があり、執筆はたいへんでしたが、英霊たちが背中を押してくれたと思っています。
――「戦艦大和」をテーマに選んだ理由は何だったのでしょうか。
日本の製造業の地盤沈下が激しい中、本作によって、かつて日本人は、これほど凄いものを造ったんだということを思い出してほしいという一念からです。いわば、製造業に携わる人たちへのエールとして本作を書きました。
実は、日本の製造業が強かった時代に、私は社会人だったこともあり、モノ作りに人一倍思い入れがあります。自分は文系だったので、研究開発に携われなかったことが悔やまれるほどです。ところが数年前、息子が理工系の大学院を卒業し、大手メーカーで開発職に就くことができました。その喜びは言葉になりませんでした。それもあって、日本のモノ作りに携わる方々にエールを送りたかったのです。