
イラスト:遠藤舞
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「天中殺だから」。仕事の人間関係で悩んでいる友達を心配していたスーさん。数年前、自分が大変だった時期に、友人が慰めてくれた言葉を思い出し――。
困っている彼女に
知り合ってからの月日はそう長くないが、気の合う友達がいる。たいてい話は尽きないし、互いの仕事に敬意もある。明るくて気が利いて、かなり年上の私に臆せず付き合ってくれる。
そんな彼女がひどく困っていた。仕事で先輩方の当たりが異様にキツくなったというのだ。詳しく聞いても、彼女に大きな落ち度があるようには思えなかった。相手の気分を害するようなことをしたのかもしれないが、間違いは誰にでもある。しかも、先方は遠回しに彼女の評判が落ちかねないようなことをしてくるそうで、陰湿極まりない。
おそらく嫉妬だ。誰にでも好かれてうまく立ち回っているように見える彼女が気に入らないんだろう。出る杭は打たれる。よくある話ではある。そう私が言い切れるのは、似た事例を過去にいくつか見ているからだ。しかし、彼女にとっては初めてのこと。天真爛漫のようで、実は誰よりも先へ先へと気を回す、繊細で気にしいなところもある彼女にとっては毎日が憂鬱で仕方ない。
人気ポッドキャスターのメル・ロビンズは、誰かが嫌なことをしてきても放っておけと言う。他者の気持ちや行動、反応は元来コントロールできないもので、そこに時間と労力を使って疲弊するのは賢明とは言えないからだ。やりたいようにやらせておけば相手の本心が透けて見え、付き合いを継続するか見極める鍵にもなる。
悩める彼女の話を聞き、そんな浅知恵をそっと渡すくらいしか私にはできなかった。多少は役に立ったようだが、思いつめた心を軽くできたかどうかはわからない。