埼玉に住む認知症の母親の面倒を見続け、最期は施設で看取った安藤優子さん。現在進行形で高齢の両親を遠方から見守る桜木紫乃さん。育った環境や家族内での立場が違えば、親に対する考え方も異なるようで――。(構成:内山靖子 撮影:玉置順子(t.cube))
親にもプライドと生活がある
安藤 うちは2005年に父がすい臓がんで亡くなり、認知症を患っていた母が10年前に89歳で亡くなりました。桜木さんのご両親は、今もご健在でいらっしゃるのですか?
桜木 はい。北海道で、87歳の父が85歳の母の面倒を見ています。母は認知症が進んで、今は私のことを忘れているんです。父は、むかし家族に苦労させたという理由で、娘たちに頼らず世話をしたいと言っていまして。週2回、母がデイサービスに出かける日は、服を着せ、替えの下着をバッグに用意して、園児のように送り出すんだそうです。
安藤 お父さま、偉いですね。80代のご両親2人きりでは、何かと不自由な気もしますが。
桜木 週に1回ケアマネジャーが来てくれるので、今のところはなんとかなっているようです。もともと父は山っ気が強くて、突然1億円の借金をしてラブホテルを始めたり、バクチや女遊びでさんざん母を泣かせてきました。
なのに数年前、母がまだ会話ができていた頃に言っていたのは、「パパがずっとそばにいてくれるので幸せだ」だったんです。その思いは尊重したいな、と。
安藤 きちんと自立した親子関係なんですね。