厚生労働省が発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2040年度には約57万人の介護職員が不足するとされ、人手不足が深刻化しています。そんななか、介護問題の取材を行うノンフィクションライター・甚野博則さんは、「介護する側も、される側も『地獄』状態なのが今の日本の介護システム」だと語ります。今回は、甚野さんの著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』から一部を抜粋し、ご紹介します。
介護には一体いくら必要なのか
「介護とカネ」の話題で、これから介護問題を控えている人にとって最も気になる点の一つは、介護には一体いくら必要なのか、ということだろう。
こうした質問に対する回答でよく用いられるのが、公益財団法人生命保険文化センターが3年に一度行っている調査だ。「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」では、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、1カ月あたり平均で8.3万円だ。前回の調査では7.8万円であるから、微増していることがわかる。ちなみに、在宅では4.8万円、施設では12.2万円が平均額だ。
だが、この数字はあくまでも参考値であり、介護度や住んでいる地域、家族の状況など、さまざまな要素で大きく変わってくる。
そもそも、この調査では、「過去3年間に、高齢で要介護状態(寝たきりや認知症など)になった家族や親族の介護費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)はおよそいくらぐらいですか」などというような聞き方をしているため、介護費用の細かい内訳などはよくわからないということもあり、あくまでも目安だ。