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気力体力が衰えて日々の暮らしに不安を感じる親、いつもどこかで親の様子を気にしてしまう子ども。離れて暮らしていても、それぞれが安心を手に入れる方法を専門家が紹介します(構成:村瀬素子 イラスト:たかまつかなえ)

年を重ねてもひとり暮らしはできる

昨今、子どもと住まいを別にし、80代、90代でひとり暮らしをしている方は珍しくありません。日本には高齢者の暮らしをサポートする公的な制度や民間のサービスなどがあるため、年を重ねて日常生活に不便を感じるようになっても、自宅で暮らし続けることはできるのです。

高齢者が安心してひとりで暮らすために不可欠なのは、「生活サポート」「お金」「安全な住まい」の3つ。いざという時に、本人はもとより、離れて暮らす子どもが過剰な心配をしなくて済むよう準備を進めておきましょう。

1つ目は「生活サポート」。自治体や非営利団体、民間企業などが提供するサービスを活用して、子どもの手を借りなくてもひとりで日常生活を送れる態勢をつくります。

サポート内容は、配食サービス、ゴミの訪問収集、家事援助、病院の付き添いなどさまざまで、介護が必要な人だけでなく、元気なシニアも利用できるものがほとんど。「重い物を運べない」「腰痛で電球交換ができない」といった不便や困りごとを、プロの手を借りて解消することで、生活の質を維持していくことができます。

次に「お金」。親が倒れたり認知症になったりした時、子どもは親の口座から勝手にお金を引き出すことができません。いつかのためにお金を準備していても、使えなければ意味がありませんから、必要な時にスムーズに活用できる仕組みをつくっておくことは必須なのです。

まずは親本人が、預貯金、年金額、株式、不動産、負債も含めた財産の洗い出しを行います。そして子どもに財産状況と、万が一の時にどのお金をどう使えばいいかを伝えましょう。そのうえで、子どもが親のお金を引き出すことができる手続きをしておきます。

最後に「安全な住まい」。転倒リスクを減らす住環境づくりはもちろん、何かあった時に、すぐに家族などへ連絡がいくよう準備をしておくこと。

隣近所の人に「一日中カーテンが閉まったままだったら、息子に連絡して」などとお願いするのも1つの方法ですし、民間の見守りサービスやグッズを利用するのも良策です。

次ページから、具体的な方法を紹介していきます。