森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。経済アナリストとして、テレビ・ラジオなど多くのメディアで活躍。『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』『がん闘病日記お金よりずっと大切なこと』など著書多数。2025年1月28日死去。享年67(写真提供:弘子さん)
経済アナリストとして活躍し、お茶の間でも親しまれた森永卓郎さん。2023年末に末期がんで余命宣告を受けたことを公表しました。今年1月、惜しまれつつも亡くなりましたが、妻・弘子さんによると、「本人はまったく死ぬつもりがなかった」のだそうで――(構成:山田真理 撮影:藤澤靖子)

働いて貯めたお金で博物館の夢を叶えて

夫・森永卓郎が原発不明がんのため亡くなって、5ヵ月経ちました。それまでも家にはほとんどいない人でしたから、私一人で猫と過ごす生活は変わりません。

でもテレビを見ている時に、「もういないんだ」と実感します。備蓄米のことや夏の参院選のニュース、2人でよく見ていた番組の出演者が変わったことなどについて、夫の考えをききたいな、と思ってしまって。

ここ「B宝館」は、夫が生涯をかけて集めた「B級でビンボーでおバカだけどビューティフル」なコレクションを展示する私設博物館です。

小学校4年生のとき、父親の転勤で暮らしたウィーンで買ってもらったフォルクス・ワーゲンのミニカーに始まり、懐かしのオモチャ、シウマイ弁当の醤油差し、消費者金融のティッシュ、ペットボトルキャップなど。60年間にわたって集めに集めた膨大なコレクションのうち、約13万点を展示しています。

亡くなってすぐの2月は臨時休館していましたが、3月に再開すると500人以上のお客さんが来てくださいました。

私は当初、博物館開設には乗り気ではなかったんですよ。もちろんコレクションが趣味だということは、結婚前からわかっていました。遊びに行った実家の部屋にはずらりとミニカーが並んでいましたし、デートで興味のない解説を延々と聞かされたこともありますから。