「花のマドモアゼル」(2016年)(画像提供:(C)真琴アート)
星のようにキラキラと輝く瞳を持つ少女たち――。昨年90歳で他界した画家・高橋真琴さんの作品は、今も多くの人に愛されています。長年活動を支えてきた長女の竹石理絵さんに、制作の背景と作品の魅力を聞きました。(構成:山田真理)

少年時代の憧れを抱き続けて

父・高橋真琴は1934年に、大阪で生まれました。男3人きょうだいの長男として育ち、読んでいたのは少年向けの本ばかり。そんな父がなぜ、洋風の少女画を描くようになったのか。

そのきっかけは、中学2年生のとき、学校の図書館で目にした少女雑誌『ひまわり』でした。中原淳一さんの絵に、「こんな世界があるのか!」と衝撃を受けたそうです。

金髪の少女の原点は、敗戦を迎えた小学校5年生のときの記憶。進駐軍の教会の庭にいた金髪の女の子が、「マミー」と言いながら走っていく姿でした。風になびく金色の髪が、日本では見かけたことのないお人形さんみたいで強く印象に残っていたそうです。

そんな少年の日の「憧れ」が、父の絵を生んだのでしょう。絵については、まったくの独学。進学した工業高校では繊維を染める技術や知識を学び、卒業後1年ほど染色の試験室でサラリーマンをしていました。

そのかたわら漫画を描くようになり19歳のときに貸本漫画家としてデビュー。その後、雑誌『少女』で漫画「あらしをこえて」の連載が始まると人気に火がつき、上京することになりました。

特に注目を集めたのは、父が完成させたといわれる《大きな瞳に輝く星》の表現。父はよく、「誰でも何かに熱中しているとき、瞳がキラキラする瞬間があるでしょう。それを表現したいんです」と語っていたものでした。

「100人のファッションショー」(1967年)/(C)真琴アート