江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。ドラマでは武士で戯作者の恋川春町<倉橋格>が老中・松平定信の怒りを買った結果、自ら命を絶つことに…。そこで今回、春町を演じた岡山天音さんにお話をうかがいました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)
春町の死について
恋川春町が切腹する場面を収録するにあたって。
「明日いよいよ死ぬんだな」とか「ああ、今日が春町最期の日だ」としみじみ考えながら家を出た覚えがあります。そういった気持ちで収録に臨んだのは初めての経験でした。
それは「自分で選択して死を選ぶ」という形があってのことだと思うんですが、とても複雑な心境でしたね。
春町は豆腐の入った桶に頭を突っ込み、「豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ」を再現して、その生涯を終えます。ドラマをご覧いただいた方には伝わったと思うのですが、これほど人格が投影された死に様というのも、なかなか…。
悲しさとユーモラスさを両立した死。そして限りなく創作的な人生の終わらせ方。
そんな状況、現実世界でなかなかないものと思いますので、役者として刺激の多い現場となりました。
なお“最期”の考え方について、現実の僕は春町と対極にあると思っていて。
生前にやってきたことに絡むことなく、むしろ解き放たれたところで生涯を終えるんじゃないかなって。春町のように、その肩書に伴う責任を背負いながら人生を終える、なんてことは、まずないんじゃないかな。