(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
これまで150以上の水族館を巡ってきた海洋生物学者・泉貴人先生は、「現代の水族館は、学者の目から見てもものすごい価値が眠っている、まさに“学術施設の極み”である」と語ります。そこで今回は、泉先生の著書『水族館のひみつ-海洋生物学者が教える水族館のきらめき』から一部を抜粋し、水族館業界に通じるプロの目から見た、水族館のウラ話をご紹介します。

展示中に食われる子もいる!?――それが自然の摂理

皆さまが水族館の水槽としてイメージする、数階吹き抜けの大水槽。沖縄美ら海水族館(沖縄県)の「黒潮の海」や海遊館(大阪府)の「太平洋水槽」、あとはアクアマリンふくしま(福島県)の「潮目の海(黒潮側)」など、大体の水族館のメインコーナーとなっている。

淡水の水族館でも、アマゾン川やメコン川のコーナーには、時に海水魚以上の巨大な水槽がある。当然、お客の多くが大水槽の前に足を止め、歓声を上げながら見上げている感じだ。

そんな大水槽の醍醐味は、何といっても大小さまざまな魚が泳いでいるところ。よくある黒潮系の水槽では、イワシ、アジ、サバ、そしてカツオやマグロ、ハタの仲間、サメ、エイ、さらにヒラメやタイの仲間まで混泳していることも。それを見て、こう思わないか? 「アレ? このイワシとかアジって、マグロやサメの餌食じゃないの? 食われないの?」と。

答えは簡単、「時には食われていますよ」だ。

これはマジな話で、イワシなどの小魚の群れに、時折アタックをかけているサメやマグロ、ハタが見られることがあるのだ。イワシの群れはそのたびに形を変え、逃げまどっているが、その中で食われている個体も間違いなく存在している。