(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
2018年にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した筑波大学名誉教授・谷川彰英先生は、苦悩と絶望に追い込まれながらも、「今の自分にできること」として、その後も何冊もの本を書いてこられました。今回は、そんな谷川先生の著書『ALS 苦しみの壁を超えて――利他の心で生かされ生かす』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。

広がった交流

ALSを宣告されて一番恐怖だったのは、社会的に孤立することでした。これまで交流のあった知人・友人・教え子たちとの交信も途絶え、一人寂しく死を迎えるのかと思うと涙がこぼれました。

しかし、それが全くの杞憂に過ぎなかったことに気づくのに、それほど時間はかかりませんでした。これは大きな嬉しい誤算でした。発信する度にリアクションが拡大していきました。その大半が私の生き方に感銘した、勇気をもらったという類いのものでした。正直戸惑いました。ALSを発症するまでの72年間一生懸命生きてきた自負はありましたが、自分の生き方が人様に影響を与えるなどとは夢にも考えたことがなかったからです。

確かにこれまで、世のため人のためにたくさんの著作を世に問うてきましたが、直接的には学者として作家として少しでも大きな成果を残したいという思いでやってきたものです。

しかし、ALS宣告以降の著作は明らかに違う意図で書くようになりました。ALSという難病にめげず執筆を続けることが、周りの人々に生きる勇気と元気を与えているかもしれないと考えるようになったからです。そのことに気づかせてくれたのは、何と見ず知らずの小中学生たちでした。