長年当たり前のようにやってきたことが、思いがけず人の役に立つことがある。誰かに喜ばれる経験を経て、ますます自分の毎日が面白くなった……そんな3人の女性に話を聞いた(撮影:藤澤靖子)
お盆恒例のもてなし料理
100年を超す年季の入った井桁型の木枠は、博物館に並んでいても違和感がない民芸品の趣だ。上に載っていた重石を取り、中身を覆う柿の葉を外すといい香りが漂い、おいしそうな押し寿司が現れた。
柿の葉の緑、酢飯の白、桜エビやでんぶの薄桃色に、ゴマの黒。彩り豊かで、手を汚さずパクリと食べられる小ぶりの柿の葉寿司が、枠の中に2段ぎっしりと並ぶ。
「柿の葉寿司は鯖や鯛など魚だけ入っているのが一般的だと思いますが、私の田舎ではこんなふうに具だくさんなんです。どうぞ召し上がってみてください」
そう言って石川県の郷土料理「柿の葉寿司」をふるまってくれたのは神奈川県横浜市在住の佐々木花子さん(83歳)。
口に入れるとしめ鯖のまろやかな酸味、とろろ昆布のうまみ、桜エビやゴマの香ばしさが酢飯と絶妙にマッチして、とてもおいしい。