(写真提供:『後悔しない選択』/KADOKAWA)
16歳で日本代表デビューを果たして以来、日本女子バレーボールを代表する選手として活躍してきた古賀紗理那さん。日本代表のキャプテンとして挑んだ2024年パリオリンピックを最後に、現役引退を表明しました。選手人生を通して多くの選択をしてきた古賀さんが語る「後悔しないための選択」とは?初のエッセイ集『後悔しない選択』より、一部を抜粋して紹介します。

美談ではない、むしろ反面教師です

幸せな時は、残念ながら長く続かず終焉の時を迎える。

震えるほどの喜びを感じながら立つことができた東京オリンピック。

私は、初戦のケニア戦で右足首を捻挫した。

相手のスパイクを止めようとブロックに跳び、着地する。何万回も繰り返してきた動作だったけれど、違ったのは、着地する場所に相手選手の足が出ているのが見えたことだ。このまま降りたら危ない。

私は咄嗟によけようとしたけれど、同じように「危ない」と引いた相手の足に、思い切り乗ってしまった。床に着く前に右足首を思い切り捻ってしまったため、痛みで立つこともできない。

チームに同行するトレーナーの若さん(若宮啓司)やコーチ陣に抱えられ、コートの外へ運ばれ、その場でドクターの応急処置を受けたけれど、痛みと腫れの度合いは自分が一番わかっていたし、2日に一度試合を戦う短期決戦のオリンピックに、自分が立つことはもうできないだろう、という予感があった。