あなたの職場に「この人さえいなければ、ストレスなく働けるのに……」という人はいませんか。1万人以上のカウンセリングをしてきた心理学者・舟木彩乃さんは「職場で悩みを抱える人たちの相談内容は、9割が人間関係に関するもの。働きやすさの9割は人間関係で決まる」と語ります。そこで今回は、舟木さんの著書『あなたの職場を憂鬱にする人たち』から一部を抜粋し、職場にいる「憂鬱な人」の実例と解決策をご紹介します。
部下とうまくコミュニケーションできない上司
〈キーワード:発達障害グレーゾーン、ASD、Iメッセージ〉
直すべきところを指摘してくれるが言い方があまりにもストレートで傷つく、自分流の強いこだわりがある、自分だけが興味を持っていることについて延々と話し続ける――上司のこんなところに困っているという相談を受けることがあります。このような上司は「発達障害グレーゾーン」の可能性があります。グレーゾーンは発達障害の「傾向」があるということで、「グレーゾーン」という診断名が存在するわけではありません。
自分は発達障害かもしれないと思って医療機関を受診した場合、その傾向はあるものの診断名がつくほどではないとき、医師から「発達障害の傾向があります」などと告げられることがあります。グレーゾーン上司本人と部下の両方から受けた相談事例を紹介します。
高山さん(仮名、女性30代)は、海外の有名理系大学院を優秀な成績で修了し、現在は企業の研究所で働いています。彼女の研究は目の付けどころが良く、これまでその研究成果は会社の商品開発に大きく貢献してきました。業績が高く評価された結果、彼女をリーダーとした研究チームが立ち上がり、ショートカットで副所長にまで昇進しました。
しかし、高山さんから話を聴くと、昇進してさらに研究に意欲的に取り組んでいるということでは必ずしもなさそうでした。管理職になったことで研究に費やせる時間が減ったことや、期待した結果を出さない部下たちに対して、いつもストレスを感じているということだったのです。