イラスト
(画:一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬3匹(クレイマー、チトー、ニコ)、猫3匹(メイ、テイラー、エリック)と暮らす日常を綴ります。今回は「猫じゃらし考」です(画:一ノ関圭)

この頃、あたしがエリック相手によく猫じゃらしで遊ぶのは、一歳になるエリックのおなかが、若猫にあるまじき太さになっていたからだ。

仔猫のときは、しょっちゅう年上の猫たちと取っ組み合って遊んでいた。チトーとすら遊んでいた。でもふと気づくと取っ組み合いはなくなり、エリックは、他の猫たちと同じくらい大きくなり、三匹三様に、どたぁっと寝ているだけになった。そして、なんだか最近太くなってきたなあ、とあたしは思っていたのだ。調べてみたら、猫の一歳は人間の十五歳。アメリカでよく見かける、肥満体の高校生の姿がかぶってきましたよ。

その頃あたしは、保護仔猫を一時預かりした。猫じゃらしで仔猫をかまってると、他の猫たちは来なかったが、エリックが加わってきた。そして屈託なく遊び、いかにも「おにいちゃん」みたいに、なんとなく仔猫の世話もしてくれるのである。

エリック、いいやつじゃんとあたしは感動し、まだまだ遊びたい盛りだということもわかってきて、仔猫がもらわれていった後も、エリックを猫じゃらしで遊ばせるようにした。ちょっと一休みのたびに、あたしはリビングに出て行って、猫じゃらし。また一休みで猫じゃらし、そのうちに、みるみるエリックのおなかが締まってきた。食べ物は変化ないので、運動の力だと思う。