世界でもトップクラスの長寿国となった日本。しかし、「より良く生きる、自分らしく最期まで、と言いながら、老い方・死に方を知っている人は多くない」と語るのは、病院の臨床で15年以上働く看護師の高島亜沙美さん。そんな現役看護師の高島さんが教える、老いと死のプロセスと終末期の現実を綴った『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』より、一部を抜粋して紹介します。
延命治療とDNARの実情
みなさん延命治療と聞いて、どんな場面を思い浮かべますか? 人工呼吸器をつけたり、心臓マッサージをしている場面でしょうか。
実は、意外にも「延命治療」という治療方法はありません。いろんな手技や療法が組み合わさって、ひとつの「治療」になりますから、定義そのものが成り立たないんです。手技や療法だけ見ると、延命治療も救命治療も大きく変わりはありません。その目的や意味が変わってくるのです。
そのため、患者さんには、いつも延命治療の考え方をこんな風に説明しています。
「たとえば、味が足りないなと思うときにかける塩と、すいかにかける塩、目的が違うでしょう。すいかにかける塩は、すいかをしょっぱくするためじゃなく、すいかの甘さを引き立たせるためにかける塩。
実は治療もそんな感じで、目的によって選ぶ手段が変わります。点滴も酸素も血圧を上げるお薬も、交通事故で運ばれてきた高校生に使う場合と、90を超えた高齢者に使う場合じゃ、意味も目的も違うんです。もちろん、結果もね」と。
※DNAR:「do not attempt resuscitation」積極的な延命治療を差し控えること