「美輪さんからまず教えていただいたのは、いわゆる《型》、舞台での見せ方でした」(撮影:小林ばく)
2025年度前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』では、主人公・朝田のぶの最初の夫となる若松次郎を演じた中島歩さん。その柔らかな物腰や低音の声に注目が集まりました。話題作への出演が続き、順風満帆な役者人生かと思いきや、ここまでの道のりは平坦ではなかったようです。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)

型の大切さを教えてもらった

『婦人公論』は美輪明宏さんの連載エッセイがあるのですよね。じつは僕が俳優デビューしたのは、美輪さんが演出なさった舞台『黒蜥蜴(くろとかげ)』でした。それが13年。

オーディションで合格したものの、あの時は本当に何もわかっていませんでした。台詞の言い回しから動き方まで逐一、手取り足取り教えていただいて。何もできなかった自分にうちのめされました。でもあの経験があったから、今の自分があると思っています。

美輪さんからまず教えていただいたのは、いわゆる《型》、舞台での見せ方でした。特に美輪さんは、言葉を美しく聞かせる、動きを美しく見せるということに非常にこだわりをお持ちの方。

もちろん、そこから先は「気持ちでやりなさい!」ということだったんですけど。当時の僕は、リアリティのある演技こそカッコいいと憧れていたので、型の芝居をすることを恥ずかしく思っていたんです。

でも後々、朝ドラや大河など時代ものの芝居を経験して痛感しました。現代とは違う、動きの少ないなかで伝わりやすくするには、やはり、型が大事になるんだな、と。

それに、現代劇の自然に話すような芝居でも、台詞を立てたり、ちゃんと見せたりする箇所も必要なので、美輪さんから教えていただいたことが、今に生きていると思います。