(撮影:本社・武田裕介)
2016年に「いのちがけ」でデビューした砂原浩太朗さんは、22年には17歳の武士を主人公とした『黛家の兄弟』で山本周五郎賞を受賞。架空の藩「神山藩」を舞台とした〈神山藩シリーズ〉など、時代・歴史小説を数多く手がけてきました。そんな砂原さんが、江戸時代の武家の女性たちを書いた短編集『武家女人記』。そこに込めた思いとは――。(構成:野本由起 撮影:本社・武田裕介)

制約に抗い、強く生きる女性たち

2016年にデビューしてから、時代・歴史小説を主に書いてきました。本書は、江戸時代に生きる武家の女性たちを主人公にした7つの短編からなります。

武家の使命は、まず家を存続させること。家柄や体面を何よりも重んじ、身分が高いほどこうした傾向が強い。そのため、武家は農家や商家よりもはるかに制約が多く、なかでも女性は気軽に出かけることすらできませんでした。

さぞかし不自由だったろうと思いますが、それでもひたすら耐えるばかりではなく、それぞれの思いや生き方があったはず。それに、作家にとっては、制約に抗うさまはかえってドラマに仕立てやすいもの。そうした世にあっても、主体性をもって強く生きる女性の姿を描きたかったのです。

7編に登場する女性たちは、身分も年齢もさまざま。全体のバランスも考慮し、読後感が清々しい作品を7割、苦みが残る作品を3割という配分にしました。

武家が政権を握る時代には、名誉を守るため、家を存続させるために、生死を懸けた出来事も起こりうる。どの短編でも、そうした時代小説ならではのシチュエーションを描きつつ、現代の読者にも相通じる心情を盛り込みました。