北上川と旧北上川を津波が遡上し、内陸まで被害が及んだ宮城県石巻市(撮影:塩坂佳子)
2万人近くの犠牲者を出した東日本大震災。なかでも震源地に近く、最大被災地となった宮城県石巻市では、行方不明者を含む約3600人が犠牲となった。石巻に移住して11年目を迎えるライターが、震災で子どもを亡くした母親たちの声を伝える

穏やかな10年目の再会

昨年の秋、スーパーでの買い物中にバッタリ、中里家の父娘と再会した。出会いは2011年の冬。私が震災ボランティアとして東京から宮城県に通っていた時だ。のちに私は石巻に移住することになるが、被災地への思いが深まった背景には、この家族との出会いがあった。

しかし、その後はなんとなく疎遠になり、移住後もSNS上で軽いやりとりをする程度で、あっという間に10年が過ぎてしまっていた。

「美幸さん!」

私が声を掛けると、「ヨシコさん!」と彼女も目を見開いて驚いた。「オトォ! ヨシコさんよ!」と、父の勉さんを手招きする。スキンヘッドの迫力ある風貌は当時のまま。しかし私の顔を見て記憶をたどるその表情が、柔らかい。

美幸さんの笑顔もあっけらかんとして、どこかピリピリしていたあの頃とは印象が違う。今はふたりの間に、穏やかで優しい時間が流れているのだ……。帰路、車を運転しながら私は胸がいっぱいになった。この機を逃さず、改めて中里家を訪問しようと決めた。