映画監督の島田陽磨さん(左)と、臨床心理士の信田さよ子さん(右)(撮影:本社・武田裕介)
〈発売中の『婦人公論』9月号から記事を先出し!〉
戦後81年経ち、帰還兵だった父による虐待に苦しんだ当事者たちが、ここ数年、声をあげ始めている。戦争トラウマを描いた映画を撮った監督の島田陽磨さんと、家族の機能不全に長年取り組んできた信田さよ子さんが、世代を超えて親子関係に影を落とす心の傷について語り合う。(構成:古川美穂 撮影:本社・武田裕介)

前編よりつづく

父親がなぜあんなふうになったのか

島田 今回の映画に出ていただいた3人ですが、みなさん、途中からご自身の家族のルーツを探り始めるんです。廃墟になっている実家に行って近隣の人たちの話を聞いたり、シベリアまで父親の兵士時代の足跡を訪ねたり。

父親がなぜあんなふうになってしまったのかを探す旅に出る。これは私が示唆したり演出したりした部分は一切なくて、みなさんご本人が自発的に行動されたことです。

信田 シベリアを訪ねたシーンなどは本当に印象的でしたね。

島田 その後、信田さんにお話を伺ったとき、「トラウマを乗り越えるのに必要なのは加害者研究」とおっしゃっていて。私はそれまで加害者研究という言葉を知りませんでしたが、期せずして彼らがやっていたことはまさに加害者研究だったと腑に落ちました。

信田 私が95年にACのグループカウンセリングを始めたときに、まず相談者にご自分の生育歴を話してもらうことにしたんです。ところが、みなさん自分のことは話せなくて、口にするのは親のことばかり。つまり親と切り離した自分がいないんです。

そうであれば、なぜ親が虐待行為をしたのか、それをきちんと研究することが、自分の理解に繋がっていく。それで「親研究」もしくは「加害者研究」と名付けたのです。