noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬マニア」」第34回は「隣人に起きる善が苦痛な私は愛のない人間ですか?」です
俳優を目指している人と付き合っていたときのこと
以前、俳優を目指している人と付き合っていたことがあった。
彼は小劇場の舞台に立ち、アルバイトをしながら、ワークショップやオーディションに挑戦する毎日を送っていた。
私は彼の一生懸命夢に向かって頑張っている姿が好きだった。小劇場に来る観客はだいたいいつもの知り合いばかり、オーディションも落ちてばかりだったけれど、それでも信じて応援していた。
当時、普通の金融系の会社で契約社員をしていた私は、「うまくいかない、つらい」と愚痴る彼に、なんの根拠もないのに「大丈夫。あなたは絶対に売れる。だってすごいオーラがあるし!」「今日の舞台もよかった。すごく雰囲気があった!」などと言っていた。オーラとか雰囲気とかって言葉はぼんやりしていて超便利だ。
彼に演技の才能があるのかどうかはよくわからなかったけれど、本当に売れてほしかった。心の底から。
付き合い出して半年が経ったころ、彼はある地方局制作の30分ドラマで、それまでで一番の大きな役が決まった。
しっかりセリフもあり、彼の持つ独特の雰囲気も存分に活きていた。そして、それをきっかけに本当に売れてしまった。
前よりぐんと大きな劇場の舞台に立つようになり、テレビや映像の仕事も増えていった。
