(写真提供:Photo AC)
環境省によると、2025年度のツキノワグマの出没件数は全国で5万件を超え、過去最多を記録しました。特に人的被害が最も多かったのは秋田県で、2025年の被害者数は67人だったそうです。今、秋田県では何が起きているのでしょうか。今回は、被害の現場を取材し続けてきた毎日新聞記者・工藤哲さんによる『ルポ クマ襲撃: 被害最多県 秋田の現場から』より一部を抜粋し、秋田県とクマの実情をお届けします。

「クマスプレー」の噴射訓練

「クマスプレー」の迅速な噴射の訓練などを行う研修会が2026年5月に秋田県仙北市の玉川ダム管理所で開かれ、取材した。実際に取り出そうとすると手間取る参加者も多く、専門家は「効果的に噴射するためには何度も練習が必要」とし、今後はより実用的な講習の普及が必要になると指摘していた。

研修会にはダムの周辺で設備の点検や巡視などを担当する関係者ら約30人が集まった。岩手県雫石町の職員で農水省農作物鳥獣被害対策アドバイザーの谷崎修さんが講師を務め、クマスプレー噴射時の留意点を説明し、その後出席者が実演した。

谷崎さんによると、スプレーはさまざまな商品が売られているが、米国の環境保護庁(EPA)が認証したカプサイシン(唐辛子に含まれる辛さの成分)が一定割合以上含まれるものが望ましいとし、安価なスプレーは濃度や噴射時間の短さなどで劣る面があると説明した。また噴射してみると実際には5メートルほど先までしか届かないこともあり、とっさに手にとって引きつけてクマの顔をめがけて噴射するには何度も練習が必要だという。

さらにスプレーを長時間高温の車に置いておくと爆発する危険があることや、3〜5年ほどの期限が過ぎると使えなくなることを説明した。噴射時に向かい風が来て顔や肌に付着してしまった場合には、洗ってしまうと皮膚に強い刺激になるため、軽くたたく程度にとどめる方がよいという。また実際にクマと向き合うことが避けられない場合、長い棒を手に距離を保ち、上からたたくのではなく前に突く方がより効果的だと考えられる、とした。