イラスト:小林マキ
会社の合併で、社風もシステムも違う人たちと働くことになった私。新しく上司になったのは合併した会社出身の課長とその傍で社員を監視するベテラン社員だった。ある日、2人に呼び出されて言われた言葉に、思わず頭に血が上ってーー(「読者体験手記」より)

和やかな職場に起きた変化

3年前、20年あまりアルバイトとして勤めた会社を無事退職した。

36歳で故郷の九州に戻ったとき、何度もハローワークに通い手に入れた、大手損保会社での仕事。社員さんたちは皆優しく親切で、ボーナスの日に支給のない私たちの慰労を兼ねてホテルのランチに誘ってくれたりした。そういう心遣いが嬉しく、給料が安くとも仕事を頑張ろうと思えたのだ。

しかし、働き始めて10年ほど過ぎた頃、時代の流れもあってか会社が合併に。社風もシステムもまったく異なる人たちが流れ込んできて、雰囲気は様変り。主導権は規模の大きかったうちの会社が握っていたものの、私の課から課長が異動となり、代わりにやって来たのは、他社で次長と呼ばれていたベテラン社員のAさんと、新たな課長だった。

もともと私の課はフロアが2ヵ所に分かれていた。デスクワーク組が7階に、私のように庶務の担当をしている者は1階に。Aさんは7階の課長の隣の席にデーンと座り、周囲のスタッフを睨んでいた。

最初は1階まで降りてくることもなく、Aさんの標的はもっぱら7階にいる若手社員のようだった。あるとき私と親しかった同僚が、「私、目をふさぎたくなるような光景を見たの。残業して皆に挨拶して退社するとき、AさんがDくんにひどい言葉を浴びせていたのよ。ミスがあったとしても、あれはひどすぎる」と言うのを聞きながら、そのうち私にも飛び火してくるような予感を抱いた。

というのも、Aさんとは請求書作成などの業務で接することがあったからだ。いつも偉そうに仕事を押しつけてくるので、それが我慢できず、時折態度に出ていたことを思い出す。

Aさんの攻撃は思わぬ形で表れた。いつもの通り仕事をしていると課長から電話が入り、「即、会議室へ来るように」とのこと。また仕事が増えるのかと思いながら中へ入ると、課長とAさんが並んで座っている。まるで面談のよう。

課長が開口一番、「君、服装はパンツではなく、スカートにできないの」と言う。私は一瞬呆気にとられたが、「私の仕事は荷物を運ぶことも多く、パンツでないと動きにくくて非効率です。それに、パンツスタイルの人もいるでしょう」と言い返すと、課長はムッとした表情で、「君、白髪が目立つよ。みっともないね」と言うではないか! そばにいたAさんが、「今はよい髪染めもあるし使ってみたら」と皮肉な笑いを見せる。私は頭に血が上り、怒りで爆発しそうになった。仕事への注意ならまだしも、これではパワーハラスメントだ。

その夜、初めて会社を辞めようと思った。しかし、ここで負けて退職すれば2人の思うツボ。耐えて、ときに抵抗しながら2人の行く末を見届けてやろうと心に誓う。その後は、自分が間違っていないと思えば課員の前で2人を批判し、私に協力してくれる同僚に励まされ仕事に邁進した。